(更年期とは)

西洋医学的に考えると、女性閉経の頃に起こる月経異常や自律神経の調節異常や神経・代謝の異常の総称です。症状は多彩で、産婦人科領域以外に内科・精神科などの領域も関与します。
東洋医学の観点からは、衝任脈とそれに連関する経脈・臓腑の病です。「七七任脈虚、太衝脈衰少、天葵尽き」といわれるように、主に虚弱の病理を反映した病態ですが、人の稟賦に個人差があるため、当該症状も色々です。一言で衝任といっても衝任脈が統括する部位・上中下により出てくる症状も異なります。衝任の下段である子宮に影響すると、月経異常を中心とした症状が現れ、衝任の通る胸である膻中に影響すると鬱病などの神経症状が中心になり、衝任脈の上段である咽部以上に影響すると、のぼせ・発汗発赤などの症状の中心になり、衝脈と並行する陽明経に影響すると過食や便秘などの症状が現れます。これらは主に相火の症状です。これに痰・湿・お血を伴うと本虚標実の病態になります。
衝・任脈はともに胞中より起こります(衝脈任脈、皆起於胞中)。胞中は子宮に相当します。また、月経は衝任脈の充溢と虚衰の交代を意味します。閉経は衝任脈の虚弱による交替機能の異常です。更年期にみられるほてり・冷えやのぼせ・頭汗顔赤などの症状は、月経再開により軽減することがしばしば見られるので、アプローチするに当たっては虚を補うのみでなく、鬱伏する熱や気滞お血に対するアプローチも大切です。

(具体的な症状)
〇月経異常症状
 月経周期不安定・月経周期短縮・月経遅延・月経量の異常・月経周期短縮・月経周期期間延長・不正出血
〇他の症状
 のぼせ(頭部熱・微熱・潮熱・午前熱・夜間熱・骨蒸熱など)、冷えのぼせ(上熱下冷)
 頭部発汗・顔発赤、動悸・不眠・多夢・健忘・眩暈・耳鳴り
 憂鬱・不安・情緒不安定・イライラ・易怒・やる気がない
 倦怠・易疲労
 頻尿・尿漏れ・残尿感・性交痛・過食・肥満・浮腫み・便秘
 手足の痺れ・肩こり・腰痛・膝足痛
〇年令等
 ①40~60才くらいの婦人
 ②上記の症状を主に不定愁訴
(弁証論治)

1腎陰虚弱
 任脈を中心とする病態です。「任主胞胎」や「任属水」といわれるように、任脈は腎と深い関連があります。月経断続不止・眩暈・耳鳴り・陰部乾燥・性交痛・腰部酸軟・骨楚無力・脈細弦渋などの症状を呈します。アプローチするに当たっては「補益腎陰・充填任脈」を主として、腎や任脈のツボを取ります。
2腎陽虚衰
衝・督脈の虚弱、陽気不足を中心とする病である。面色無華・元気がない・骨楚無力・無気力・頻尿・尿失禁・浮腫み・寒がり・不安・動悸・眩暈・帯下・月経がいつまでも止まらない・脈細無力などの症状が現れます。アプローチには「温補腎陽・温衝益督」を主として腎や任脈のツボを取ります。
3相火妄動
 更年期によく見られる病機。衝脈伏火・相火上亢・心腎不交があります。
 1)衝脈伏火(鬱火)
 衝は血海となし、その脈は肝腎胃に隷属するから、厥陰風木の気を受け、生命全過程において生長の機を司るというイメージがあります。衝脈伏火は厥陰の気が生長の機より異常の気に転じ、柔順な性から剛動の性に転じたものです。つまり、衝脈の機能が異常になると疎泄の働きが停滞して、衝脈とその関連する肝胆経、陽明胃経などの機能を障害して熱化を呈することによって生じたものです。
 衝脈鬱火によく見かける症状は3タイプに分けられます。
 1つ目のタイプは「月経異常出血と不正出血」。衝は血海ですから、衝脈に伏熱があれば血海に伝わり、血海が熱をもてば出血します。この出血は「衝脈に伏鬱した熱が出てくる」 ことと理解すればよいでしょう。
 2つ目のタイプは「精神憂鬱の病態」。衝脈「胸中に至って散る」というように衝脈に伏鬱した熱が胸中に波及して引き起こされた症状です。胸は膻中を含む部位で、膻中は神使の 官ですから、胸が憂鬱に撹乱されると、不安・不自主・恐怖・睡眠障害・やる気がない・倦怠感などの精神症状を呈します。
 3つ目のタイプは過食症。これは衝脈に鬱伏した熱が陽明胃経に波及するために起こります。衝脈は少陰・陽明の間に並んで巡るため、衝脈の鬱熱はよく陽明経に波及します。  胃熱が盛んになると消穀に働きますので、過食症や便秘などを引き起こします。
 以上3タイプはいずれも衝脈に伏鬱する熱の症状ですが、鬱熱の波及方向により現れる症状が異なることを示しています。臨床では1人の患者に3タイプの症状をそれぞれ見ることがよくあります。興味あることは、月経異常や不正出血が主な症状として現れるときは鬱病のような神経神経症状が軽いということがしばしば見られます。これは出血という形で衝脈の鬱熱が寫出した結果と解釈されます。この現象を利用して、神経症状や相火上炎などの症状が強い患者に理気疎肝、引熱下行(熱を引き下行させ)、活血通経の方法を用いて月経を再開させて神経症状や相火上炎の症状を軽減させることが可能です。
2)相火上亢
 相火は命門に源し、三焦・包絡に預かり、全身臓腑に布散する生命活動のエネルギーであり、一種の気と理解されます。気といっても臨床では生理的な気というよりも、病理的な気です。更年期の相火上亢は衝脈・任脈の虚弱が肝腎に影響した結果です。すなわち、衝と任のバランスが崩れ、衝気が上衝して三焦・包絡の相火が降下できなくなった結果です。のぼせ・冷え・頭部出汗・顔色紅潮・動悸などの症状は衝気上衝・相火上亢の代表的なものです。閉経が早い時や月経量が少ない人には相火上亢の症状が強く出ます。
3)心腎不交
 心は火に属し、腎は水に属します。水火相済、肝腎相交は中医学における平衡理論の重要な考え方の一つです。心腎不交とは「腎水が上の心に供給できず、心火も腎に下行しない」という病理状態です。腎気虚弱が先行して任脈の虚弱を引き起こす更年期には、腎水が上の心に供給できず、心火が上がり独りで盛んになるため、動悸・不眠・ほてりなどの上熱の症状が現れます。一方、心火は下行できず、腎水が心火の気化を得ないから倦怠感・頻尿・足が冷えるなどの下冷の症状が現れます。

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